不眠症とは?
- 寝つきが悪い(寝床に入っても寝付けない)
- 夜中に目が覚めて、眠れなくなる
- 朝早く目が覚めてしまう
- 寝ても熟睡感が得られない
など、このような不眠の症状をお持ちの方は、「不眠症」という病気の可能性が高いです。
当院にはさまざまな症状を訴える患者さんがご来院されます。一晩だけ眠れないといった軽いものから、数カ月にわたって十分な睡眠が得られていないという重いものまで、症状は人それぞれ異なります。
不眠の症状には大きく4つのタイプ(入眠障害/中途覚醒/早朝覚醒/熟眠障害)があります。ひと口に不眠といっても必ずしも病気的なものとは限りませんが、一度受診して診断を受け、適切な治療を受けることが大切です。心身の不調を感じる方は、お気軽にご相談ください。
不眠の受診のタイミング
不眠のほとんどは、一時的な症状であることが多いです。その場合は、リラックスしながら規則正しい生活を心がけることで自然に治ることが多い傾向にあります。
一方で、眠れない状態が1週間以上続くと、日常生活に支障をきたすような症状が顕著にあらわれます。睡眠のトラブルだけでなく、日中に強い眠気や倦怠感などの不調を感じたら、受診をおすすめします。
不眠の状態が続くと、認知症や糖尿病、高血圧、うつ病、ときには脳卒中や心臓病などの命を危険にさらすような病気の発症リスクを高めることが分かっています。睡眠時間が不足すると免疫力が低下するため、がんや感染症の罹患率もあがると考えられています。
不眠を単に「眠りの問題」と軽視するのではなく、心身の健康を左右する重要な問題であることをよく理解して、症状を放置せずに受診するようにしましょう。
不眠症の種類と症状
不眠の原因と発症リスク
睡眠障害は、不眠が3か月以上持続する慢性不眠と、それ以外の短期不眠に分類されます。(国際分類:ICSD-3)
そのほかにも、
- 一過性不眠
- 短期不眠
- 長期不眠
この3つのタイプに分ける分類法もあります。
この不眠のタイプによって、原因や発症リスクが異なります。
一過性不眠
一時的な急性のストレスや時差ボケなどが原因で数日間眠れなくなる不眠です。普段の生活に戻ると眠れるようになることが多く、治療を受けなくても治ることが多いと考えられます。
短期不眠
仕事や家庭の問題、また心身の病気などが原因でストレスを感じ、それが比較的長期にわたることで起こる不眠です。1~3週間程度、眠れなくなることが多いです。
ストレスや病気のほか、アルコールや薬の副作用、加齢、体内時計の乱れなど、複数の原因が関連している場合も少なくありません。患者さんのお体の状態に合わせて、いくつかの睡眠薬を使い分けることで症状は改善します。
長期不眠
1ヶ月以上眠れない状態が続いた場合、不眠症(重症の不眠)と診断されます。短期不眠と同様に、ストレスや病気、そのほか様々な原因が考えられますが、自然に治りにくいため早めの治療が必要不可欠です。
不眠の発症リスクを高める病気
不眠を招く病態としては
- 睡眠時無呼吸症候群
- うつ病などの精神疾患
- 認知症
- パーキンソン病
- 心不全
- 気管支喘息
- 腎臓病
など、さまざまな病気が隠れているケースが少なくありません。
短期不眠(1~3週間程度)、長期不眠(1カ月以上)の状態を経験したら、なるべく早めに不眠の治療を開始し、別の病気が隠れている可能性がないかを調べましょう。
不眠症と睡眠薬の処方(種類・料金)
現在、不眠症の治療で医療機関で処方される睡眠薬は
- ベンゾジアゼピン受容体作動薬
- メラトニン受容体作動薬
- オレキシン受容体拮抗薬
の3つがあります。
睡眠薬は、不眠の症状のタイプと薬の作用時間を基準にして選びます。
当院で処方可能な睡眠薬は以下の通りです。
お薬代のみで、初診料、診察料は0円
※当クリニックで処方する治療薬は全て国内正規品です。
不眠治療薬の種類 | 料金 |
---|---|
超短時間型睡眠導入剤 (例:ハルシオン、マイスリーなど) |
3,800円~4,800円(税込) |
短時間型睡眠導入剤 (例:レンドルミンなど) |
3,300円(税込) |
中間型睡眠薬 (例:サイレース、ユーロジンなど) |
2,200円~3,800円(税込) |
短時間型抗不安薬 (例:デパス、ソラナックスなど) |
2,200円(税込) |
睡眠薬を服用するときには、どんな副作用があり、どの程度、どのような時期に表れやすいのかを医師に相談し、正しい知識を持っておくことが大切です。「はじめてで不安」という方も少なくありませんが、適切に服用すれば睡眠薬は決して怖くはありません。
もしも副作用が現れて日常生活に支障が生じた場合は、薬の種類を替えたり量を調整したりすることが必要です。副作用が起こったときは、速やかに受診して相談してください。
睡眠薬の種類について
ベンゾジアゼピン受容体作動薬
中枢神経系の働きを抑える脳内の神経伝達物質であるGABA(γアミノ酸酪)の働きを強める作用があります。脳の働きをおだやかにして活動を鎮め、催眠を促す睡眠薬です。
この薬は化学構造の違いによって、さらに「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬と、「非ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬に大別されます。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、作用の持続時間が長いものから短いものまで種類がたくさんあります。非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は副作用が比較的軽度ですが、薬の作用時間は短めです。
メラトニン受容体作動薬
入眠を促すメラトニンの受容体と、体内時計に作用することで自然な眠りを引き出し、睡眠と覚醒のリズムを整えます。脳の温度を下げ、少し血圧を下げるなどの作用が働き、体全体を眠りにつきやすい状態にすることで、自然な眠りをもたらします。
夜型の方や、睡眠時間のズレが改善しない方、不安が弱い方などに適した睡眠薬です。
オレキシン受容体拮抗薬
オレキシンは覚醒を促す働きをもつホルモンです。オレキシンが受容体に結合すると、覚醒の信号が発生して覚醒状態が維持されます。この睡眠薬にはオレキシンの受容体への結合を遮断する作用があり、それによって睡眠を促します。寝付きにくい入眠障害や、夜間に目覚める中途覚醒、眠りの浅い熟眠障害にも効果を発揮します。
睡眠薬の副作用とリスク・注意事項
睡眠薬がはじめてで不安な方へ
従来、処方されていた睡眠薬の中には、薬が徐々に効かなくなってやめにくくなったり、誤った使い方(薬物乱用)をすると命に危険が及んでしまったりするケースもありました。そのため、睡眠薬と聞くとどこか怖いイメージを持たれている方は多いのではないでしょうか。
睡眠薬の種類にもよりますが、現在、主に使用されている睡眠薬は適切な用法・容量を守って正しく使えば、重篤な副作用は少なく、長期服用しても依存性が比較的少なくなっています。しかしながら、睡眠薬の増量はもちろん、減量や中止の検討は、必ず医師に相談したうえで行うことが重要です。
高齢者の方は薬の効きすぎや副作用に注意
加齢とともに内臓の働きも低下するため、高齢者の場合は特に、睡眠薬が効きすぎたり、副作用が出やすくなったりします。高齢の患者さんに睡眠薬を処方する際は、副作用やリスクを十分に理解して頂いたうえで、睡眠薬の投与量を減らすことが一般的です。
睡眠薬の一般的な副作用
ベンゾジアゼピン系睡眠薬
不眠症の薬として使用される「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」の主な副作用は次の通りです。
- 持ち越し効果
睡眠薬の作用が翌朝以降も続き、日中の眠気やふらつき、脱力や倦怠感、頭痛などの症状が現れる場合があります。作用時間が長いタイプの薬ほど、このような症状が出やすくなります。 - 記憶障害
催眠作用が強く、作用時間が短い薬を多用すると、服用してから寝付くまでの出来事や翌朝目覚めてからの出来事の記憶が一時的に失われることがあります。 - 反跳性(はんちょうせい)不眠、退薬症候
とくに作用時間が短い薬を突然中断すると、睡眠薬の使用時よりも強い不眠が起こる(反跳)場合があります。不安や焦燥、振戦(しんせん:筋肉が意識とは関係なく一定のリズムで収縮と弛緩を繰り返すことで起こる体の震え)、発汗、ごく稀にせん妄や痙攣などの症状があらわれます。 - 筋弛緩作用
作用時間の長い睡眠薬は、筋肉を弛緩させる作用があります。ふらつきや転倒のリスクが高まるため、注意しましょう。 - 奇異反応
ごく稀に、不安や緊張感が高まり、興奮して攻撃的な言動が現れることがあります。薬の作用時間が短い薬を多量に服用したときや、アルコールとの併用時に起こりやすいとされています。
メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬
ベンゾジアゼピン系睡眠薬に比べて副作用は少ないものの、翌朝までの持ち越し効果、めまい・頭痛などの症状が起こる場合がありますので注意が必要です。
睡眠薬の服用を開始するときの注意
- 用法・用量を必ず守る
自己判断で服用量や服用回数を変えてはいけません。服薬の中止は、不眠の悪化や副作用の増強を招くリスクがあります。 - できる限り、寝床に入る直前に服用する
睡眠薬は服用してから10~30分程度で効果が得られます。その間に活動すると、副作用の症状が表れやすくなるため注意が必要です。寝る準備が整ってからお薬を飲み、速やかに寝床に入ることを心がけましょう。 - アルコールと同時には飲まない
睡眠薬に限ったことではありませんが、アルコールを含むお酒を薬と一緒に飲むと、副作用が起こるリスクが高まります。また、薬とアルコールを併用すると、記憶障害が出現しやすくなります。とても危険なので、必ず守りましょう。
不眠症・睡眠薬に関するよくあるご質問
睡眠薬の依存症が不安なのですが、大丈夫でしょうか?
医師の指示に従って服用することが極めて重要です。
睡眠薬は、長期服用のリスクを十分に把握し、適切に処方しなければなりません。当院では、睡眠薬への依存を防ぐために、医師が丁寧に睡眠薬について解説します。もちろん患者さん側の協力も必要不可欠です。自分勝手な判断で薬の量を増減してしまうと、服用前より不眠が悪化しやすく、結果的に依存につながります。
不眠の症状が改善したら、一度受診してご相談いただき、適切な時期に睡眠薬の減量や中止を検討することが大切です。
睡眠薬を使っていると、徐々に効果が薄れたりするのでしょうか?
睡眠薬の種類によっては、徐々に効かなくなったり、薬の耐性が出現しやすくなったりするものもあります。
睡眠薬の中には、薬の作用が減弱しやすいものがあり、同じ服用量では徐々に効かなくなるものもあります。そのため、十分な睡眠が得られなくなってしまうのではと、不安をもつ患者さんは少なくありません。
大切なのは、勝手に睡眠薬の服用量を増やしたり、服薬を中断したりしないことです。中断すると不眠が悪化することもあるので、必ず医師の指示を守る必要があります。たまたま睡眠薬を飲まなくても眠れた場合でも、勝手に服用をやめずに、一度受診して医師に相談するようにしてください。
睡眠薬は、ほかの薬やドリンク剤と一緒に飲んでも問題ないのでしょうか?
薬物の相互作用があるため、注意が必要です。
複数の薬の飲み合わせによって互いの薬の作用・副作用が増強することがあります。これを薬物相互作用といいます。睡眠薬は、風邪薬や抗うつ薬、生活習慣病の治療薬(糖尿病や高血圧など)、マクロライド系抗菌薬、消化性潰瘍薬、副腎皮質ホルモン薬などとの薬物相互作用に注意が必要です。
お薬だけではなく、サプリメントやドリンク剤も注意が必要です。サプリメント(栄養補助食品)も睡眠薬の分解を妨げることがあります。またドリンク剤はアルコールやカフェインが含まれているものが多いため、睡眠薬と一緒に飲むと、睡眠薬の作用・副作用が増強します。よく理解したうえで服用するようにしましょう。不安なこと、気になることはお気軽にご相談ください。